フランス語を勉強している皆さんの中には、フランス語の資格試験、
仏検やDELF&DALFの試験に向けて勉強されている方も多いのではないでしょうか。

私も留学前後の生徒さんやフランス語レッスンの生徒さんから、
「仏検とDELFどちらを受けるのが良いでしょうか?」とよく相談を受けます。

この二つの試験を比較して生徒さんにアドバイスするとき、以下の観点に着目します。

・試験の形式
・文法のレベル
・語彙のレベル


この記事では2つの試験のそれぞれの特徴と違い、どのような場合にどちらの試験がお勧めかを徹底解説いたします!

どちらを受験するか、どの級を受験するか、
迷っている方の参考になりましたら嬉しいです。

まずは各試験のレベル相互表、各試験の概要を見てみましょう。
(直接本題に進みたい方は、上記の下線文字のリンクをクリックしてください。)

レベルの相互表

フランス政府が管理・運営するフランス文化センターである「アンスティチュ・フランセ」は、以下のように相互関係を目安としています。

TCFは獲得した点数によってレベルが評価される形式の試験です。

いずれも異なる試験なので、この相互表はあくまでも目安です。

レベル仏検DELF&DALFTCF
上級
Supérieur
DALF C2レベル6(600〜699点)
上級
Supérieur
1級DALF C1レベル5(500〜599点)
中上級
Avancé
準1級DELF B2レベル4(400〜499点)
中級
Intermédiaire
2級DELF B1レベル3(300〜399点)
初級
Élémentaire
準2級DELF A2レベル2(200〜299点)
入門
Débutant
3級DELF A1レベル1(100〜199点)
4級・5級0〜99点
参考:アンスティチュ・フランセー資格試験

仏検(実用フランス語技能検定試験)

日本で受験するフランス語の試験と言ったら、
英語で言う「英検」に並んで知名度の高い「仏検」です。

正式名称:実用フランス語技能検定試験
フランス語名称:Diplôme d’Aptitude Pratique au Français(DAPF)

実施団体:財団法人フランス語教育振興協会(APEF)

公式ホームページ:
https://apefdapf.org/

<特徴>
・仏検3級以上の級は、大学入試の推薦入試・AO入試などに活用できます
・日本語でフランス語を学習している方にとっては馴染みやすいです

以下の情報は2021年3月時点の情報です。
最新の情報は公式ホームページをご確認ください。

<試験日程の目安>
春試験 1次:6月第3日曜日 / 2次:7月第3日曜日
秋試験 1次:11月第3日曜日 / 2次:翌年1月第4日曜日

<合格基準点>
3〜5級は60点が基本のようです。3級は55点になることもあります。
準2級以上は毎回若干の変動があります。
2次試験もあり、満点が100点ではない級もあり、ここでは説明しづらいため、
気になる方は公式ホームページを参照ください。
2019年度合格基準点・合格率

<各級の試験概要>

5級
筆記:マークシート・一部語記入(60点) 30分
リスニング:マークシート・一部語記入(40点) 15分

4級
筆記:マークシート・一部語記入(66点) 45分
リスニング:マークシート・一部語記入(34点) 15分

3級
筆記:マークシート・一部語記入(70点) 60分
リスニング:マークシート・一部語記入(30点) 15分

準2級
1次試験
筆記:マークシート・一部記述(70点) 75分
ディクテ:記述(12点) 約25分(リスニング込)
リスニング:語記入・記号選択(18点)
2次試験
個人面接5分(30点)

2級
1次試験
筆記:マークシート・一部記述(68点) 90分
ディクテ:記述(14点) 約35分(リスニング込)
リスニング:語記入・記号選択(18点)
2次試験
個人面接5分(30点)

【準1級
1次試験
筆記:記述・一部記号選択(80点) 100分
ディクテ:記述(20点) 約35分(リスニング込)
リスニング:語記入・記号選択(20点)
2次試験
個人面接7分(40点)

【1級】
1次試験
筆記:記述・一部記号選択(100点) 120分
ディクテ:記述(20点) 約40分(リスニング込)
リスニング:語記入・記号選択(30点)
2次試験
個人面接7分(40点)

DELF&DALF(Diplôme d’études en langue française)

フランス国民教育省公認の外国語としてのフランス語能力認定資格です。

正式名称:Diplôme d’études en langue française・Diplôme approfondi de langue française
日本語の読み方:DELF(デルフ)・DALF(ダルフ)

日本国内の試験センター:札幌、仙台、東京、横浜、名古屋、京都、大阪、徳島、福岡

公式ホームページ:
https://www.delfdalf.jp/accueil_jp.php

<特徴>
・フランスでも通用する資格のため、フランス留学を予定している方には断然有利です
・フランスの大学に出願するにはDELF B2以上が必要です
・留学経験がある方は、口頭試験が圧倒的に有利なのでお勧めです

以下の情報は2021年3月時点の情報です。
最新の情報は公式ホームページをご確認ください。

<試験日程>
春試験 ジュニア:5月第3日曜日 / 一般:6月第1土曜日・日曜日
秋試験 ジュニア:10月第3日曜日 / 一般:11月第1土曜日・日曜日
※一般は口頭試験が後日になることがあります

<合格基準点>
A1〜C1は4技能それぞれ25点満点中5点以上、かつ合計50点以上。
C2は2部それぞれ50点満点中10点以上、かつ合計50点以上。

<各級の試験概要>

【A1】
聴解:選択式問題(25点) 約20分
読解:選択式問題(25点) 30分
作文:書式の穴埋め1問、作文1問40語以上(25点) 30分
口頭試験:自己紹介、質問、ロールプレイ(25点) 準備時間10分、面接時間5〜7分

【A2】
聴解:選択式問題(25点) 約25分
読解:選択式問題(25点) 30分
作文:手紙などの文書作成2つ、それぞれ60語以上(25点) 45分
口頭試験:自己紹介、要約、ロールプレイ(25点) 準備時間10分、面接時間6〜8分

【B1】
聴解:選択式問題(25点) 約25分
読解:選択式問題(25点) 45分
作文:手紙や新聞記事などに対する個人的見解、160語以上(25点) 45分
口頭試験:自己紹介、ロールプレイ、要約・考えを述べる(25点) 準備時間10分、面接時間15分

【B2】
聴解:選択式問題・記述式問題※(25点) 約30分
読解:選択式問題・記述式問題※(25点) 60分
作文:代表者の立場で書く抗議文などの公式文書、250語以上(25点) 60分
口頭試験:選択した題材の要約、考えを述べる、試験管と討論(25点) 準備時間30分、面接時間20分
※近々、選択式問題のみに変更される予定


【C1】
聴解:選択式問題・記述式問題(25点) 約40分
読解:選択式問題・記述式問題(25点) 50分
作文:複数の長文を読み総論・論述的エッセイ作成、200〜240語※(25点) 2.5時間
口頭試験:選択した題材の要約、考えを述べる、試験管と討論※(25点) 準備時間60分、面接時間30分
※事前に「文芸」「人文科学」「科学」のいずれかの分野を選択する。

【C2】
聴解&口頭試験:音声を2度聞き要約、自分の考えを述べる※(50点) 準備時間60分、面接時間30分
読解&作文:2000語ほどの資料を読み文書作成、700語以上※(50点) 3.5時間(辞書の使用可)
※事前に「文芸」「人文科学」「科学」のいずれかの分野を選択する。

試験の形式

さて、ここからが本題。仏検とDELFの違いを見ていきましょう。

まずは試験の形式には以下のような違いがありますので、
得意な形式、苦手な形式を意識して受験する試験を決めるのも良いでしょう。

口頭試験の有無

試験形式で最も大きな違いはDELFには常に口頭試験がある点です。

A1からC2まで一貫して口頭試験があります。
最初は簡単な自己紹介やカフェやお店のロールプレイに始まり、
最後には長文を読んだ上で要約した内容と自分の考えを発表し、試験官と討論をします。

留学経験者で会話に慣れている方にとっては圧倒的に有利です。
最終的に会話ができるようになりたい方には、ぜひDELFにチャレンジしてほしいです!

逆に話すのが苦手な方にとっては、口頭試験のない仏検5〜3級がチャレンジしやすいかもしれません。

問題文の言語

DELF問題文も全てフランス語のため、初級の段階で心を閉ざしてしまう方もいますが、もったいない!

出題形式に変更がない限り、出題形式の説明文は毎回読む必要はありません。
問題文の文章レベルも各レベルに合わせてあります。
問題文に出てくる単語もほぼ決まっていますので難しくありません。

その点、問題文が日本語で記載されている仏検は安心感があります。
最初のステップにはチャレンジしやすいかもしれません。

ディクテの有無

仏検には準2級以上にディクテがあるのも特徴です。

聞き取った内容を正確に書き起こすには、発音されない文字やリエゾンなどを理解している必要があり、4技能とは違った練習が必要になります。

フランスの小学校では国語でディクテの練習をするそうです。
同じ発音でも綴りが違ったり、発音されない文字があったりするのがフランス語の特徴。
それを理解し習得するのにぴったりの学習方法です。

4技能を鍛えていても、意外と苦戦するディクテ。
仏検を機会に鍛えてみるのも面白いと思います。

問題の細やかさ

仏検ではテクニック的な問題も多く、文法が重視されているようです。
細かな部分に特化した問題形式が多いのが仏検の特徴です。

初歩の段階から「動詞の活用」「代名詞」「前置詞」を問う問題形式が多く、
また仏検準1級で出題される「名詞化」は特に手強いと評判です。

それに比べてDELF・DALFでは4技能で評価しますので、
聴いた内容・読んだ内容が理解できているか、作文・口頭で表現ができるか、
と大まかな問題構成になっています。

もちろんその中には高度な文法が求められることもありますが、
問題形式として文法に特化した問題はありません。

文法のレベル

文法のレベルで見るとレベル相互表の仏検の列を、1段〜1.5段ほど上に上げても良いのではと思います。

入門〜中級の生徒に教えるときには特に、どの試験を受けるのかで文法をどこまで網羅するか決めています。

仏検で求められる文法

入門〜中級までを受験される方は特に注目です。
前章でもお話しした通り、仏検では文法に特化した問題が多いです。

5級では現在形、否定形、初歩的な語彙、DELFではA1レベルです。
4級では過去形、未来形がさらに必要となり、DELFではA2レベルです。

3級になると一気に条件法、接続法まで必要となり、
DELFではA2を超えてB1に該当します。

これが文法において相互表と異なる印象を受ける要因です。

DELF・DALFで求められる文法

聴解や読解に使われる文法は、ある程度目安があります。

A1では現在形、否定形、初歩的な語彙、A2では過去形、未来形、
B1では条件法、接続法と、ある程度一定で段階的に必要となっています。

作文や口頭試験では、上記のような文法が使いこなせるに越したことはありませんが、
文法的なミスの配点はあまり高くないのです。

それよりも全体として文章がまとまっていることや流暢さが評価されやすいようです。

文法が接続法まで進んでいなくても、留学経験があり流暢さがある方は、
仏検3級よりもDELF A2がお勧めです。

語彙のレベル

語彙のレベルもまた学習する際の重要なポイントです。
何を題材に、どのような語彙力をつけるべきか参考になると思います。

仏検で求められる語彙

まず5級・4級・3級までは「日常的な語彙」からスタートします。

準2級から始まるディクテには簡単なエッセイが題材とされます。
過去問やディクテ練習問題を使って語彙を増やしていくことをお勧めします。

そして準1級に向けてはやはり名詞化があるので、動詞や形容詞を習得すると同時に名詞を覚えるようにしたり、一定のルールがあるのでそれに慣れていくことが求められます。
それ専用の参考書もあるので活用してみるのも良いでしょう。

一般的に語彙学習は、「日常的な語彙」から段階的に「物事や感情の描写」や「概念的な語彙」へと難易度が高くなっていきます。

その中でも問題文で繰り返し使われる語彙から習得していくと、効率良く学習できます。

DELF・DALFで求められる語彙

DELFでは「日常的な語彙」から「新聞記事レベルの語彙」そして「専門的な語彙」へと段々とレベルアップしていきます。

A1・A2は日常生活や家族・友人との一般的なシーンを想定されています。

B1になるとさらに少し問題があるところにアドバイスをしたり、問題解決をするためのコミュニケーションを求められます。
口頭試験のロールプレイで、試験官が少し無理を言う役を演じるのはお決まりです。

B2になると日常生活から社会的な場面にさらにレベルアップします。
聴解や読解はラジオや新聞を題材としたものに変わります。
また作文では何かに反対する立場として抗議文を書くことが多いです。

C1・C2はさらに『事前に「文芸」「人文科学」「科学」のいずれかの分野を選択する』とされており、より専門的な語彙が必要とされます。

まとめ

仏検とDELFの違いが少し明確になりましたか?

最後に私がいつも皆さんにアドバイスするときにお伝えすること。

それは…
DELF・DALFにぜひチャレンジしてください!

せっかく学習しているフランス語。
フランス語で会話ができたときに、最も達成感を感じませんか?

その点4技能を鍛えられるDELF・DALFはやはり合理的だと思います。

また出題される題材・問題形式もよりフランス文化を感じます。
以前にも書きましたが、抗議文を書くってとてもフランス的ではないですか?

文章の要約や自分の考えを論理的にまとめるなど、
フランス語とともに日本人が苦手とする力も鍛えることができます。

とは言っても、仏検が必要なシーンや日本語の問題文が良い、という方は、
仏検ももちろんフランス語学習の腕試しをする良い機会です。

皆さんにぴったりの試験にぜひチャレンジしてみてください!

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